二つの文化の間の架空の国

――ブロートの小説『大いなる敢行』に対するカフカの批評――

 

【出典と要約】

 

【出典】:「言語・情報・テクスト」(東京大学大学院総合文化研究科 言語情報科学専攻 紀要)Vol.6、1999年3月、27頁ー49頁(199810月、関西学院大学で開かれたオーストリア文学研究会における講演に加筆した原稿)。

 

【要約】:

 1917年後半から1918年初めにかけて、カフカとブロートは文通の中で、ブロートの長編小説『大いなる敢行』(1918年)をめぐって興味深い議論を行なっている。ブロートは『ティコ・ブラーエの神への道』(1915年)で、ユダヤ教を意志の自由に基づく倫理的努力の宗教と解釈したが、自分自身の不倫によって倫理的行為を実行できない自分に直面した。のちの宗教哲学書『異教、キリスト教、ユダヤ教』(1921年)で、彼は人生の領域を二つに分け、一方に自由意志を、他方に神の恩寵への信仰をわりふるという解決に到達した。『大いなる敢行』は、『ティコ』から『異教、キリスト教、ユダヤ教』にいたる途中の危機の時期の、ブロートの自伝的要素が色濃い作品である。カフカはこの作品の中に、自分自身もその一員である西ユダヤ人の精神的病が典型的に描き出されているのを見出した。

 

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