ユダヤの非合理的な伝承

――カフカの『万里の長城』における「指導部」の問題――

 

【出典と要約】

【出典】:思想〔岩波書店〕第816号、1992年6月、82頁108頁

この論文は、大幅に加筆訂正の上、『カフカ ブーバー シオニズム』の第6章に用いられている。

【要約】:

 『万里の長城』の三つの「社会的装置」のうち、指導部の問題を扱っている。指導部の解釈の助けになるのは、『町の建設』という未完の断片である。『町の建設』と『万里の長城』の間には数多くの類似点があり、両者は兄弟作品と見なすことができる。ブロートはこの断片にシオニズムへのほのめかしを見出している。両作品の比較から、『万里の長城』の「指導部」は『町の建設』の「伝承」と同じ機能をはたしていることがわかる。語り手は、シオニズムが聖書に由来する宗教的「伝承」を「歴史」に、宗教運動を民族主義運動に改変していることを見逃さない。「春の川」のたとえ話には、作品執筆当時、シオニズムをめぐってマルティン・ブーバーとヘルマン・コーエンの間で行なわれていたメシアニズム論争への皮肉な言及が見られる。

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