カフカの「気になる隣人」のモチーフ

【出典と要約】

 

AmazonKindle】として2014年3月出版。

 

【初出】:<過去の未来>と<未来の過去>:保坂一夫先生古稀記念論文集(同学社、2013320日)、199-210

【要約】:

  カフカが1916六年11月末から書き始めた何冊かの八折判ノートには、「気になる隣人」というタイトルでまとめられるような一連の断片が書かれている。これらの断片作品には、カフカのマルティン・ブーバーに対する、対抗心と嫉妬心に満ちた複雑な感情が描かれている。

 【本論で取り上げた断片】

【T】一つの間違い。私が開けたのは私のドアではなく、上の階の長い廊下の部屋だった。「間違いました」と言って、また出ていこうとした。そのとき、そこの住人が見えた。やせた髭のない男で、口を固く結んで、小テーブルの前にすわっていたが、その上には石油ランプしか載っていなかった、(NSI 328f.

【U】我々の家は、場末の途方もない建物で、破壊できない中世の遺物がいくつも混じり合った安アパートであるが、この建物の同じ廊下にある、ある労働者家族の部屋に、一人の役所の書記(Amtschreiber)が同居している。みんなは彼を役人と呼んでいるが、しがない書記だとしか考えられない。彼は、他人夫婦と六人の子供たちのねぐらの真ん中で、床にわら布団を敷いて夜を過ごしているのだ。そんなしがない書記であるなら、なんで私と関わりがあるものか。なにせ、町が煮出した悲惨さが集まっているこの家でさえも、確実に百人以上の人が住んでいるのだが、(NSI 331)

【V】私と同じ廊下の部屋に修繕専門の仕立屋が住んでいる。私は服をとても注意深く着ているのだが、すぐにいためてしまう。先日も、また上着を仕立屋のところに持ち込むはめになった。晴れて暖かい夏の夕方であった。その仕立屋は、自分と細君、それに六人の子供のために、たった一部屋しか持っておらず、しかもその部屋は同時に台所も兼ねていた。そのうえ仕立屋は一人の同居人を置いているのだ。そいつは税務署の書記(Schreiber von der Steuerbehorde)だ。この部屋の状態は、我々の建物の通例、それはもう十分にひどいものなのだが、それさえも少しばかり上回っている。何といっても、人それぞれ分相応ということだから、仕立屋にはこういう切りつめた生活をしなければならないやむをえぬ事情があるには違いないし、他人がその事情を穿鑿しようなどとは思わない。しかし、たとえば顧客としてこの部屋に入ると、否応なしにわかってしまうのは、(NSI 332)

【W】私はクルムホルツ氏のところに下宿している。同じ部屋を税務署の書記と一緒に使っている。その上、この部屋の同じベッドでクルムホルツの二人の娘も寝るのだ。六歳と七歳の少女だ。書記が入居してきた最初の日――私自身はすでに何年も前からクルムホルツのところに下宿している――から、私は彼に対して、さしあたりはきわめて漠然とした疑念を感じていた。やや小柄で、虚弱で、おそらく肺があまり丈夫でないのだろう。灰色のだぶだぶの服を着ていて、顔はしわだらけ、年齢不詳。白髪まじりのブロンドの髪を長めに伸ばして、耳にかぶせている。鼻先にずり落ちた眼鏡をかけ、顎には同じように白髪まじりの短い山羊ひげをはやしている、(NSI 333

【X】ブロートによって「隣人」と名づけられた短編作品(NSI 370-2)

さらに「特権意識 Kasgtengeistという忘れられた小品(NSI 329f.)

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