通俗的伝説の再論

――ミラン・クンデラのカフカ/ブロート論について――

 

【出典と要約】

【出典】:東京大学教養学部「外国語科研究紀要」第43巻第1号、1995年、1頁39頁

 

【要約】:

 ミラン・クンデラは『裏切られた遺言』(西永良成訳、集英社)の中で、カフカの人物像と作品を歪曲したマックス・ブロートの「裏切り」を告発している。ブロートはカフカを聖人化することによって、カフカ作品の性描写の新しさを隠蔽した、とクンデラは主張する。彼が根拠にするのは、『愛の魔法の国』というブロートの小説であるが、彼がこの忘れられた小説を引き合いに出したのは、ブロートの『カフカ伝』(カフカの性生活について触れている)に言及しないですませるためであった。クンデラはまた、ブロートを「カフカ学」の開祖にすることによって、宗教的解釈や伝記的解釈に専念して、カフカ作品の美学的検討を怠る「カフカ学」全般をも非難する。ところが、ブロートのテクスト改竄や宗教的解釈へのクンデラの非難は、まさにバイスナーをはじめとするカフカ学者のブロート非難と同質なのである。クンデラは、これまでの「カフカ学」と同じ安易なブロート批判を繰り返しているだけで、カフカと同じ「西ユダヤ的時代」の問題に取り組んだブロートの意義を忘却せしめている。

 

※この論文への書評:クンデラの恋文

 

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