民族統合の空虚なる記号

 ――カフカの『万里の長城』における「皇帝」の形象――

 

【出典と要約】

 

【出典】:思想〔岩波書店〕第854号、1995年8月、128頁―151頁

※この論文は,加筆訂正の上、『カフカ ブーバー シオニズム』の第7章に用いられている。

【要約】:

 『万里の長城』の三つの「社会的装置」のうち、皇帝の問題を扱っている。この作品の皇帝は通常の権力者ではない。この作品の皇帝(Kaiser)は、中国民衆の意識の中に、そのシニフィエが曖昧なシーニュ=言語記号としてしか存在していない。「ユダヤ人(Jude)」という言語記号にも同じような曖昧さがある。実は、帝国(Kaisertum)はユーデントゥーム(Judentum)をほのめかす秀逸な隠喩であった。語り手の帝国=ユダヤ民族に関する考察は、中国民衆=ユダヤ人が、確固たる信仰を持たないという弱点を民族の統合手段にしているという逆説的事態を暴き出して終わる。

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