カフカにおける「ユダヤ人」問題

【出典と要約】

 

【出典】: へるめす[岩波書店]第25号、1990年5月、54頁―63頁

※この論文は、大幅に加筆の上、『カフカ ブーバー シオニズム』の第4章に用いられている。

 

【要約】:

カフカは一九一一年秋から一二年初めにかけて、レンベルクから来たイディッシュ語劇団に熱中したが、その背後には、孤独の壁をうち破り、共同体に参加し、人々との連帯を獲得したいという、広義の意味でのエロス的衝動が働いていたと思われる。イディッシュ語劇団への熱中の直後に、フェリス・バウアーとの恋愛が始まるのは偶然ではない。しかし、性格的にまったく異なったフェリスとの恋愛は彼に、「必然的な共同生活」の困難さを教えた。彼は一九一六年にはフェリスにユダヤ民族ホームでヘルパーとして働くように勧めるが、その目的は彼女との間に「精神的な結びつき」をつくり出すことであった。しかし、彼女との結婚の試みが最終的に失敗に終わったとき、彼は他者との共同生活が困難な自己の病を、西ユダヤ人一般の病理の一典型として理解する。このような西ユダヤ人観はカフカに特有なものではなく、ブーバーも同じ見解を持っていた。ブーバーは、キリスト教社会の中でアトム化した個人となったユダヤ人を救済するために、ハシディズムの「宗教性」を利用するとするが、カフカはブーバーの宗教哲学に納得できなかった。彼自身は、チューラウのアフォリズムで「究極の事物」に関する考察を行なうようになる。

 

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